はじめに:内定は「ゴール」ではなく「スタート」
新卒採用市場は今、空前の「超・売り手市場」が続いています。2026年卒・2027年卒の採用現場では、1人の学生が複数の内定を持つことが当たり前となり、企業側にとっては「内定を出してからが本当の勝負」という過酷な状況です。
「せっかく内定を出したのに、競合他社に流れてしまった」
「内定承諾直前になって、親の反対で辞退された」
「内定者フォローをしているつもりだが、本音が読めない」
こうした悩みを抱える人事担当者の方は少なくありません。
なぜ、今の学生は内定を辞退するのか。そして、どうすれば「この会社に決めた」と心から納得してもらえるのか。本記事では、採用コンサルの現場で培った、Z世代の心を掴む「内定辞退防止」の具体策を解説します。
1. なぜ、学生は土壇場で「辞退」を選ぶのか?
対策を立てる前に、まずは学生が辞退に至る心理的背景(原因)を理解する必要があります。
「内定ブルー」という漠然とした不安
就職活動という大きな決断を終えた直後、学生は「本当にこの会社で良かったのか」「もっと自分に合う会社があるのではないか」という「内定ブルー」に陥ります。特にSNSで他人の就活状況が可視化される今、他社と比較して不安が膨らみやすい傾向にあります。
「リアリティ・ショック」への警戒
昨今の学生は、入社後のミスマッチを非常に恐れます。「残業は本当はどうなのか」「配属ガチャで希望が通らないのではないか」といった不安に対し、明確な答えが得られないと、より情報の透明性が高いと感じる他社へ流れてしまいます。
「親ブロック(オヤカク)」の存在
本人に意思があっても、親や大学の先生などの周囲からの「その会社で大丈夫なの?」「はじめて聞く会社」という何気ない一言で決意が揺らぐケースが急増しています。特にBtoB企業やベンチャー企業など、親世代に馴染みのない企業ほど、この傾向は顕著です。

2. 承諾率を高める「内定出し」の作法(クロージング)
内定の出し方ひとつで、承諾率は大きく変わります。単なる「合格通知」で終わらせてはいけません。
「条件」ではなく「期待」を伝える
内定通知の際には、給与や待遇などの条件面だけでなく、「なぜあなたが必要なのか」という定性的なフィードバックをセットで伝えてください。「〜〜さんの〇〇という強みが、当社の△△とマッチしていると感じた。活躍してくれると確信している」と、選考を通じて見つけた本人と企業の価値観の一致や、入社後の活躍イメージ、期待を言語化することが重要です。
「内定者」ではなく「パートナー」として扱う
内定を出した瞬間から、学生は「選考対象」から「一緒に働く仲間」へと変わります。一方的に情報を伝えるのではなく、「入社までに解決しておきたい不安はあるか?」「キャリアプランを一緒に考えよう」と、相手のキャリアに寄り添う姿勢を見せることが、信頼関係の構築に繋がります。

3. 内定者フォローの「3ステップ」
内定を出してから入社までの数か月間、学生の熱量を維持し続けるための具体的な施策を紹介します。
ステップ1:多角的な接触で「孤独」にさせない
人事が定期的に連絡を取るだけでなく、「年齢の近い若手社員」や「配属予定先の上司」との接点を設けてください。
若手社員座談会: 仕事の悩みやプライベートの過ごし方など、人事に聞きにくい本音を解消する
職場見学・ランチ会: 実際に働く環境を目にすることで、入社後の自分を具体的にイメージさせる
ステップ2:情報の透明性を高める(配属・キャリア)
多くの学生が抱える不安は「配属先」です。完全に希望を通すことが難しくても、「どのようなプロセスで配属が決まるのか」「希望が通らなかった場合にどのようなフォローがあるのか」を誠実に説明することが安心感を生みます。
ステップ3:親御さんの安心感を醸成する(オヤカク対策)
最近では、内定者本人だけでなく「家族」に向けたアプローチも効果的です。
家族向けレターの送付: 社長からの挨拶や、会社の安定性、福利厚生をまとめた冊子を郵送する
内定者家族向け説明会: オンラインなどで、親御さんからの質問に直接答える場を設ける企業も増えています
【実例】内定承諾率が45%アップした企業の成功事例

弊社が実際に支援した企業様の中から、内定者フォローの仕組みを変えることで劇的な成果を上げた2つの事例をご紹介します。
事例A:地方の中堅IT企業(従業員数250名)
【課題】
大手企業との競合により、内定を出しても「安定性」を理由に辞退されるケースが続出。承諾率は40%を切っていました。【施策】
徹底的な「情報の透明化」と「親へのアプローチ」
会社インスタグラムの開設、先輩社員の1日のスケジュールや、部署ごとの雰囲気、失敗談などをに公開。
社長による「親御さん向け説明会」を本社にて実施し、社長自らが事業方針と、教育体制を直接プレゼン。【結果】
学生の親御さんから「代表や社内の方の顔や雰囲気が見えて非常に安心だ」という声が上がり、内定承諾率は85%まで向上しました。
事例B:急成長中の不動産ベンチャー(従業員数50名)
【課題】
選考スピードは早いが、内定承諾までの期間に他社の選考が進み、比較検討の末に辞退される「内定ブルー」が課題でした。【施策】
同期とのふれあいと、一人ひとりに合わせた「オーダーメイド・フォロー」
内定者向け(承諾前・承諾後両方参加可能)のイベントを、月に1回のペースで開催。同期と一緒に活動し会話する機会を設けることで、仲間意識を醸成。
またそれぞれの状況に応じて、定期・不定期にリクルーターによるカジュアル面談を実施。業務の話は一切せず、学生の就活の悩みや不安を聞き出す役割に徹しました。【結果】
内定者同士の距離、また学生と会社との心理的距離が圧倒的に近くなり、競合他社へ流れる学生がゼロになりました。
事例から学ぶ共通点
これらの事例に共通しているのは、「学生が抱えている不安を、人事が先回りして解消している」という点です。 「内定を出したから安心」ではなく、内定を出した瞬間から「どうすれば自社のファンになってもらえるか」を考え抜くことが、承諾率向上の唯一の近道です。
4. コンサルが教える「辞退予兆」のチェックリスト

内定辞退は、ある日突然起こるものではありません。必ず「サイン」があります。以下の項目に当てはまる学生がいたら、早急に対話の場を設けてください。
・メールの返信速度が明らかに遅くなった
・内定者懇親会などのイベントを理由をつけて欠席する
・会社からの連絡に対する反応が薄い
・質問の内容が、以前よりも「リスクヘッジ(残業や退職金など)」に偏ってきた
・入社前課題や提出書類の期限を守らなくなった
これらの兆候が見られた場合、「催促」をするのではなく、「最近どう?」と心理的な安全性を確保した上で面談を行うことが、辞退を未然に防ぐ唯一の方法です。
まとめ:誠実なコミュニケーションが最大の防衛策
新卒採用における内定辞退防止に、魔法のような特効薬はありません。しかし、「学生を単なる数としてではなく、一人の人間として大切にする」という姿勢を仕組み化することで、承諾率は確実に改善します。
自社のフォロー体制を見直し、学生が「この人たちと一緒に働きたい」と確信できる環境を整えていきましょう。
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